交通事故と保険
1 交通事故の補償(自賠責保険)の適応範囲
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)とは、公道を走るすべての自動車やバイク(原付含む)に加入が義務づけられており、一般に「強制保険」と呼ばれています。
交通事故の被害者が、最低限の補償を受けられるよう、被害者救済を目的に国が始めた保険制度です。
保険では下記の費用が認められ、その合計限度額は120万円です。
計算の結果それを超えるようであれば、越えた部分に関しては任意保険か、加害者本人に請求する必要があります。
<治療費>
合理的な治療費の実費応急手当費、診察料、入院料投薬料、手術料、処置料等通院費、転院費、入院費など。
保険で支払われる為、被害者は払う(負担する)必要はありません。
※接骨院での施術料も同様です。
<慰謝料>
慰謝料とは、交通事故の被害者を受けた事に対する心の負担や苦痛を精神的苦痛の損害ととらえ、それを補償する金銭の事を言います。
交通事故の治療で、自賠責保険や任意保険を利用して通院した場合には、治療関係費、休業損害および慰謝料が支払われるので、患者さんの負担(治療費)はありません。
被害者の方には、同乗者が同時に被害を被った場合でも1名につき、通院1日4,200円が支払われます。
慰謝料の対象になる日数は、「治療期間」と「治療実日数」によって決定されます。
治療期間…治療開始日から治療終了日までの日数
治療実日数…実際に治療を行った日数
「治療期間」と「治療実日数」×2で少ない方の数字に4,200円をかければ慰謝料が算定されます。
例:治療期間100日の場合⇒100日×4,200円 =420,000円
治療実日数30日の場合⇒30日×4,200円×2=252,000円
上記の計算式で少ない方となりますので、この場合の慰謝料は252,000円となります。
その他に交通費・休業損害などが加わります。
※上記で「治療実日数」×2とありますが、治療実日数の2倍の慰謝料が算定されるのは病院に通院した場合と、接骨院に通院した場合のみです。
鍼灸院や整体院では、治療実日数のみしか算定されません。
慰謝料の面から見ると接骨院にかかる方が有利と言えます。
妊婦が胎児を死産又は流産した場合は、上記の他に慰謝料が認められます。
<交通費>
通院に際しての交通費も支払われます。
1. 電車、バスなど
規定の用紙に運賃を記入することで支払われます。(領収書不要)
2. タクシー
歩行困難や交通手段のない場合で、やむを得ないと認められた場合。(領収書が必要)
3. 自家用車
通院距離に応じた燃料代(1kmあたり15円)、有料道路の通行料金、病院の駐車場料金が支払われます。(燃料代以外は領収書必要)
※1.2.3とも事前に保険会社への確認必要です。
<休業損害費>
交通事故のケガで仕事が出来ない場合、自賠責保険基準では原則として1日あたり5,700円が支払われます。
また、日額5,700円を超える収入があることを証明出来る場合には、19,000円を上限に下記の計算式による実費が支払われます。
1. 給与所得者
過去3カ月間の1日当たりの平均給与額が基礎となります。
事故前3カ月の収入(基本給+付加給与(諸手当))÷90日×認定休業日数
(会社の総務課が作成したもの、担当者名、代表社印)
2. パート・アルバイト・日雇い労働者
日給×事故前3カ月間の就労日数÷90日×認定休業日数
(アルバイト先などの証明を要します。)
3. 事業所得者
事故前年の所得税確定申告所得を基準に、1日当たりの平均収入を算出します。
4.家事従事者
家事が全くできない場合は収入の減少があったものと見なし、1日当たり5,700円を限度として支給されます。
2 自賠責保険の請求時効
自賠責保険には、請求に時効があります。
1. 加害者請求の請求期限は被害者に対して損害賠償を行った(被害者本人や医療機関に金銭を支払った)日の翌日から2年間。
尚、支払が何度かに分かれた場合は、それぞれの支払を行った日から2年間です。
2. 被害者請求の請求期限事故が発生した日の翌日から2年間。
ただし、後遺障害の場合は、症状固定日の翌日から年間です。
<自賠責保険が適用されないケース>
いくら交通事故と言っても、100%被害者の責任で発生した事故(無責事故)に関しては、相手車両の自賠責保険金(共済金)の支払い対象にはなりません。
具体的には、被害車両が追突したケース、被害車両が信号無視したケースなどが該当します。